水産加工品の中で重要な位置を占めている「かまぼこ」


はじめに
 当研究室では発足当時から、かまぼこに関連する基礎から応用分野までの幅広い研究をしています。かまぼこが伝統食品ならかまぼこに関する研究は、当研究室のお家芸というところです。
 何故かまぼこのようなマイナーなものを研究するのかという疑問もあるかもしれませんが、水産加工品総覧という本のはじめに全国水産加工品主産地地図というものが掲載されています。これには、各都道府県の水産名産品が地図中に記されていますが、ほとんどの県で特有の水産ねり製品(かまぼこ類)が載っています。それほど水産加工品の中ではかまぼこは重要な位置を占めているわけです。もちろん生産量も年間60万t以上あり、水産加工食品の中では最も力を注ぐべき品群の一つです。
 ここ数年、当研究室では市販かまぼこの品質が地域でどのように違うのかを調べています。これは、品質の良いかまぼこを安価に製造する技術を開発しようとした時に、良いかまぼことはどのようなものか知る必要があったためです。全国レベルでかまぼこの品質を調査して、それぞれの地域に特徴があるのかどうかを客観的な数値で表すことにしました。
 かまぼこの品質といっても外観、味、におい、食感など様々な項目が関係します。しかし、かまぼこの場合には、何と言っても足(あし)が重要です。足とはかまぼこ特有の品質を示す言葉で、食べた時の弾力性のことを言い表す言葉です。麺類では腰(こし)という麺特有の食感を言い表す言葉があるのと同じです。
 そこでかまぼこ特有の足を表すための表現方法を工夫しました。当研究室では、かまぼこの弾力性を測定するための測定装置を用い、押し込み破断試験と応力緩和試験という2種類の測定手段を用いて地域毎のかまぼこの足の違いを調べてみました。それをかまぼこのお国柄と題したわけです。実験結果を紹介する前にかまぼこの基本知識を載せておきます。種類のところでも、地域の違いが分かると思います。




かまぼこの歴史
 かまぼこの由来は中国から伝来したとか、日本固有に発達したとか諸説あります。日本で最も古い文献は平安時代に書かれた「類聚雑要抄(るいじゅうぞうようしょう)」で、これには関白右大臣藤原忠実が永久3年(1115年)に宴会を開いた時のご馳走が挿絵とともに描かれており、串を刺したかまぼこが載っている。
 元々、かまぼこと言う名は、蒲の穂の形か鉾の形に似ていたので付けられたと言われているので現在のちくわの一種が出されていたと思われる。それが、いつのまにか板付きのもの(室町時代には存在した)がかまぼこで、穴の空いたものをちくわと呼ぶようになってしまったようです。
 このようにかまぼこは料理献立の一つとして発達したもので、家内工業ではあるが販売目的で製造されたのは江戸時代からと考えられています。




かまぼこの日は11月15日
 1115年に初めてかまぼこに関する記述がなされたことから、かまぼこ業界では11月15日をかまぼこの日としています。



 
焼き抜きかまぼこ


焼き抜きかまぼこ
 現在の主流である蒸し加熱を行わずに直火で加熱したもので、始めは板面から加熱を行います。山口県の仙崎地方は白焼き抜きかまぼこといって表面に焼き色が全く見られず、表面に細かなちりめんじわと呼ばれるしわがあるものが特産品として有名です。大阪のあぶり焼きだけで仕上げたかまぼこは、焼き通しかまぼこという名前で呼ばれている。その他、愛媛県の宇和島地方の焼き抜きかまぼこも有名です。和歌山県のなんば焼きは四角い鉄製の容器に詰めて、あぶり焼きするもので、独特の形状で知られています。



 
蒸しかまぼこ


蒸しかまぼこ
 関東の代表的な蒸しかまぼこは小田原かまぼこ(写真上-左)で、色が極めて白く、板からはみ出るほど横に広く、板の上に高く盛り上がるように成形されており、非常に強い弾力性のある足が特徴で、値段もびっくりするほど高い。
 関西では大阪焼きかまぼこが(写真上-右)代表で、焼きかまぼこと言っても加熱は蒸しが中心で、最後に表面を焼いて焦げ目を付けるので焼きかまぼこと呼んでいます。小田原かまぼこと違って山の低い扁平な形状をしているが、これは同じ重量でも、できるだけ大きく見せる大阪ならではの工夫である。関西のかまぼこは,「あし」よりも「あじ」を重要視するようで、甘味や旨味が強いのが特徴です。
 新しい加熱技術として、ジュール加熱といってかまぼこをチタン製の電極で挟んで通電することで、かまぼこ自体を抵抗として発熱させる(電熱器のニクロム線と同じ原理)ことで短時間(ほんの数分)で加熱を終了させる方法がかなり取り入れられています。昇温だけをこのジュール加熱方式で行う場合と、加熱工程を完全にジュール加熱で行う場合がある。厳密にはジュール加熱だけで仕上げたかまぼこは蒸しかまぼこではないが、蒸しかまぼこに含まれています。




リテーナー成形かまぼこ
 1940年代に新潟で技術開発されたかまぼこで、比較的歴史が浅いかまぼこです。これは、低温坐りと呼ばれるかまぼこの足を極端に増強させることができる工程をとっているのが特徴で、練った肉を板に付けた後、板ごとフィルムで完全密封してから型にはめ込み、冷蔵庫で12時間から24時間置いた後に高温で蒸し上げるものです。型に入れるので肉が少々軟らかくてもよいことから水をたくさん加えることができ、密封してから加熱するので二次汚染もなく保存性がよいなどの利点がありますが、極端な坐りはのど越しを悪くするという問題もあります。北海道や静岡でも生産されています。



 
昆布巻かまぼこ(写真左)、赤巻き(写真右)、青巻きかまぼこ


昆布巻かまぼこ、赤巻き、青巻きかまぼこ
 富山県で作られているかまぼこです。江戸時代に北海道から北前船で運ばれたものを利用したもので、その名前のとおり昆布の上にかまぼこのねり肉を乗せて巻き込んだもので、「の」の字が中央に見えるように巻かれています。魚のイノシン酸と昆布のグルタミン酸により旨味が増して特有の風味を持つかまぼこです。
 赤や青に着色したねり肉を薄い板状に成形してから加熱してシート状に仕上げ、それを昆布のかわりに巻いたのが赤巻き、青巻きかまぼこである。このシート状のものを麺切りローラーで切るとかに風味かまぼこのようになるので、かに足かまぼこはこの技術が応用されたものと思われます。(実際には、かに風味かまぼこを開発したので広島県のメーカーで、富山県のメーカーは何故気付かなかったのか残念がってました)



 
簀(すだれ)巻き(す巻、つと巻、すぼ巻ともいう)


簀(すだれ)巻き(す巻、つと巻、すぼ巻ともいう)  富山・高知のものは竹簾で巻いて蒸しあげた後に簾をはずし、表面にみりんを付けてあぶり焼きします。愛媛や山口のものは、平たく並べた麦わらの上にねり肉をころがし周囲を麦わらで覆い、蒸しあげるものですが、最近ではプラスチック製のストローを使うようになっています。



ちくわ


豊橋ちくわ
 一般的なちくわといえばこの豊橋ちくわタイプのものである。愛知県豊橋の名産品で両端が白く中央部にだけ焼き色が付いている。ちくわ類は金串や鉄棒に刺し蒸さずにあぶり焼きで仕上げる。




野焼き
 島根県出雲地方の名産で、大型のちくわで長さ30cm程度あり、大きいものでは90cmのものまであります。トビウオだけで作ったものはアゴ(トビウオのこと)の野焼きと称されます。




長崎ちくわ  長崎ではかまぼこよりもちくわが高級品で、品評会でもよい評価を得ています。直径10cm、長さ20cmの大型のちくわなど様々なサイズのちくわが生産されています。特に、手で成形したものは、指の跡が残り、握りちくわと呼ばれています。




ぼたん焼きちくわ(冷凍焼きちくわ)
 東北地方で多く生産される煮物用のちくわで、冷凍して流通される。高級品にはアブラザメが入っています。加熱時に表面が部分的に膨らみ(加熱時に表面のタンパクが変性して膜を作り、内部から発生する水蒸気によって膨らむ)、膨らんだ部分が焦げて大きな斑点模様が表面にできます。デンプンが大量に入っており、煮るなどの調理をしても硬くなりません。



笹かまぼこ


笹かまぼこ
 宮城県の特産品として非常に有名です。平串に刺してあぶり焼きしますので、名前はかまぼこですが、ちくわの仲間になります。笹の葉の形に成形しているので笹かまぼこの名前がついています。




白天
 関西では、揚げかまぼこを「天ぷら」と呼びます。もちろん、衣の付いた揚げ物も「てんぷら」と呼びます。白天は揚げる温度を低くして焦げ目をつけないいようにして揚げたもので、キクラゲやショウガ、イカなどの種物を入れることもあります。揚げ油の温度を180℃くらいにまで高くして焦げ色をつけたものが赤天で、さつま揚げやつけ揚げと同じようなものです。中に短冊状のゴボウを入れて揚げたものがごぼ天です。



 
さつま揚げ(つけ揚げ)


さつま揚げ(つけ揚げ)
 関西では、揚げかまぼこを「天ぷら」と呼びます。もちろん、衣の付いた揚げ物も「てんぷら」と呼びます。白天は揚げる温度を低くして焦げ目をつけないいようにして揚げたもので、キクラゲやショウガ、イカなどの種物を入れることもあります。揚げ油の温度を180℃くらいにまで高くして焦げ色をつけたものが赤天で、さつま揚げやつけ揚げと同じようなものです。中に短冊状のゴボウを入れて揚げたものがごぼ天です。




皮てんぷら(ジャコ天)
 愛媛県宇和島、八幡浜地方で作られており、近海で獲れるホタルジャコなどの雑魚を原料に作られています。頭と内臓は除きますが、その他の皮や骨は一緒に細かくして仕上げますので、色は黒くなりますが、魚の旨味が強くおいしいかまぼこです。



浮きはんぺん


浮きはんぺん
 東京名産のかまぼこで、銚子でも作られています。色が白く、内部に大量の空気を抱き込んでいるのでふわふわした食感をしています。原料にはヨシキリザメなどのサメとヤマイモを使うのが特徴で、四角い枠に詰めて湯の中で茹でて仕上げます。ヤマイモを使わずに茹で上げたものが「しんじょ」で、気泡がないので水には浮きません。



魚そうめん


魚そうめん
 塩すり身を小さな孔が空いた筒にに詰め、ところてん式に上から押し出してお湯の中に落としてそうめん状に固めたのが魚そうめんです。たれを付けてそうめん風に食べたり、すまし汁の具にしたりします。



伊達巻き


伊達巻き
 大量の卵と砂糖が入った鮮やかな黄色いかまぼこで、おせち料理の重箱には必ず入っています。四角い鉄鍋であぶり焼きした後、竹簀で巻き込んで渦巻き状に成形する。内部に気泡を抱き込んでいるので通常のかまぼこと違って、弾力はなく、ぱさぱさした食感をしています。



梅焼き


魚そうめん
 大阪の名産で、梅の花の形をしている卵黄入りの黄色いかまぼこです。伊達巻きと同様に食感はソフトです。



 
かに風味かまぼこ


かに風味かまぼこ
(1)刻み式かに風味かまぼこ
かに風味に味付けをし、ブロック状に成形して表面を赤く着色した後に、細かく繊維状に刻んだフレーク状(かにのほぐし身をイメージ)とそれを塩すり身でつないで棒状に成形して加熱したのがかに棒状かまぼこです。

(2)シート式かに風味かまぼこ
かに風味をつけた塩すり身を赤巻きかまぼこで紹介した方法でシート状にし、製麺機の裁断機を使って細長い繊維を作ります。それを束ねて表面を着色後にフィルムで包装し適当なサイズに切って、加熱したのがかに足状かまぼこです。現在では,欧米でサラダ用に数万tが生産されています。

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